カテゴリー「書籍・雑誌」の記事

2014年5月24日 (土)

珈琲店タレーランの事件簿

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副題は長すぎるので書きません(笑)

正直、最初の半分くらいまではつまらないのでがっかり。しかし後半はなかなか読み応えがあって楽しめました。半分程度で読み止めない事をお勧めします。最後のエンディング数ページは不要と感じるのですが、2巻、3巻と続いていくためには欠かせないエピローグです。もしかすると続巻が決まったので最終章を継ぎ足ししたのかもしれません。個人的には最終章が無くても完結していたように感じますし、そちらの方が結末としては緊張感や文学的な意味から言えばよかったかな?まあでも文学作品ではなく推理小説ですから。

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ただ推理小説、事件簿と言ってもそれほどたいそうな事件ではありません。コーヒー好きが薀蓄を語りまくる小説ですが、まあ嫌味になるほど長々と説明されているわけではありません。私は味音痴、コーヒーの香りは好きなのですが味は差がわからずいつもインスタントコーヒーです。以前イギリスに行ったときに本当のエスプレッソを飲んで眼を白黒させたのですが、この本を読んで「飲み方が間違えていたな」と勉強になりました。

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主人公のアオヤマ君は京都の一角にある「タレーラン」という喫茶店に逃避してきて人生最高のコーヒーに出合います。そのバリスタが切間美星。ここまでで分かった人はすごいのですが、アオヤマはブルーマウンテン、キリマはキリマンジャロから来ています。他の登場人物も珈琲とかかわりのある名前になっています。それで事件と言いますと、結局のところ美星さんの恋愛ドタバタ劇です。どちらかといえば面白いのはアオヤマ君の存在ですが。

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 とにかく最終章まで読んでください。一方で最近多いのですが表紙の絵につられて買ってはいけません(笑)100万部を突破した人のうちのどのくらいの割合が表紙だけ本を買って読まずに放置しているか…。コーヒーが好きな人にお勧めの本ですが推理小説好きには物足りません。

 

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2014年5月15日 (木)

幻想郵便局 堀川アサコ

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作品としては現時点で3部作になっていますが、実際には次に続く幻想映画館との2部作です。幻想日記店はあとから無理矢理修正されていますが、独立した本として読めます。その話題は幻想日記店の紹介で。

 

さて、この微妙なホラーの作品で怖くなって途中で読むのをやめたいと感じる事はありませんでした。ちょっと背筋がひんやりとするくらいです。不思議な世界を大胆に描いており、主人公が生きているのか死んでいるのか悩むくらいです。とにかく言葉を選んで書かなければネタバレしてしまいそうなので細心の注意を払いながら紹介します。

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仕事が見つからず困っていた主人公の安倍アズサがアルバイト先として紹介される山の上の郵便局で不思議な世界と触れ合う話です。一番怖いのは初めて郵便局に到着するまでの部分、その後世界観がわかってくればそれほど怖さはありません。ただやはり少しザワザワする感じは残りますし、特に最後の戦闘シーンは進撃の巨人並みの激しさです。主人公はヒロインではなくただ振り回されるだけですが、そのせいか読者として共感できました。

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この2連作の影の主人公ともいえる真理子さん、彼女の破天荒ぶりがかなり笑えます。このひと騒動から主人公の安倍アズサは何かを学んだのでしょうか…たぶんそんな話ではありません。ただ可能性として、「どんな特技も身を助ける」という教訓がこの作品のテーマかもしれません。

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次に続く幻想映画館には真理子さんだけが登場します。

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2013年5月16日 (木)

アフターダーク「村上春樹」

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ねじまき鳥クロニクルを読んで、「村上さんの本は過程を楽しむ小説である」ということを理解できていますからアフターダークも楽しく読むことができました。もちろん村上さんの小説ですから最後まで読んでも結果はわかりません。「読者が勝手に想像してください」という事なのでしょうね。たとえば白川の耳はそぎ落とされるのかどうか。

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姉貴は何でこんな扱いなのか…いくらわかりにくい村上さんの作品でも、姉の「エリ」に対しては、もう少しヒントなり情報なりを与えてほしいのですが、その一方で予想できていましたよ、「何も情報が与えられないこと」くらい。物語の主役は「マリ」という19歳の女の子。深夜12時ころから朝まで、彼女が過ごしていく都会でのちょっとした冒険がメインストーリーです。

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もちろんいつものように、彼女の周りを彩る数多くの出演者が登場します。そしていろんな問題をほのめかします。そして問題の結果どころか経過さえも読者には情報を与えずに舞台から降りていきます。映画ならいいのですが、ドラマにすることは不可能かもしれません。視聴者から膨大な数の苦情が来るはずです(笑)

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村上さんの本にしては短めで読みやすいですし、後味の悪さも少ない一方で感じるのは物足りなさかも。

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2013年5月14日 (火)

本所深川ふしぎ草紙「宮部みゆき」

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とても面白い本なのですが、この本の前に読んだのが「ねじまき鳥クロニクル」という極端に歪曲した物語だったことは失敗でした。宮部さんは短編より長編が優れた作家です。短編は時間つぶし的に読めるようやさしさに包まれたほんわかした物語です。ねじまき鳥の世界から抜き出せていない私には、そこがどうしても物足りない。

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宮部さんの作品は妖怪や超自然現象を扱ったものも多いのですが、この短編集は時代劇でありながら本道の推理小説です。爽快で面白い短編の集まりでした。誰もが読みやすく楽しい一日を過ごせるような話なのです。私も会社の昼休みに読むような場合であればきっと楽しめたと思います。腰を据えて読む本ではありません。

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深川の七不思議をサブテーマにした七つの短編集。主人公はちょっと不幸な女の子たちでほんわかとした結果を迎えます。シンデレラ・ストーリーのようなハッピーエンドではありませんが、全編を通して活躍する名わき役の「岡っ引きの茂吉」がついているので彼女たちは大丈夫というエンディングを迎えます。結論がすっきりとしているので誰が読んでも楽しめる本です。

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本当にねじまき鳥クロニクルの次に読んだことだけを後悔しています。

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2013年5月12日 (日)

ねじまき鳥クロニクル「村上春樹」 その2

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前回はストーリーの話をしていませんでした。井戸とバットの話しかしていませんでした。

 

まあ、この二つの存在がハルキ・ワールドへの入り口であり、他の登場人物はわき役に過ぎないのかもしれませんけどね。「ねじまき鳥」は決して主人公ではなく、いくつかの世界をつなぐ蝶番のようなもののように感じています。

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端的に言えば岡田氏が奥さんのクミコさんを探す物語。クロニクル(年代史)とは皮肉なタイトルで、最初は普通の幸せな夫婦の風景なのでごまかされますが、物語は時間も空間も超越した形で進んでいきます。彼らの周りには不思議な登場人物がたくさん出てきます。推理小説が好きな私は彼女らが「布石だ」とほくそ笑みます。しかし回答は与えられないのです。彼らの役割は最後までわからず、登場しては物語から消え、時々衝撃的な発言をしながらも「ほっぽらかし」です、私にとってみればですが。

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読書が好きな人たちにしてみれば(もしくは国語が得意な人にしてみれば)、雑多な登場人物は不可欠で明確に「ねじまき鳥」と呼ばれる岡田氏と結びついているのかもしれません。もしくは彼の対局でもあるノボル氏と結びついているのかもしれません。しかし私にはうまくつながらず断片となり、最後に不安感のみが残るのです。

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過程を楽しむ物語であり、結論を楽しむ小説ではないのでしょう。過程の楽しさという面では私が読んだ村上さんの本の中で最高傑作でした。

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2013年5月11日 (土)

ねじまき鳥クロニクル「村上春樹」 その1

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ハルキストに教えてもらいたいのは、井戸の底に潜ってバットを握りしめたことがあるかどうか。

 

過去の日記の繰り返しになるのですが、エンジニアの方々は覚悟をして読んでもらいたい作者です。多くの謎に解は与えられません。ヒントさえ与えられていないように感じるのです。それでもハルキストの方たちは多くの明快な回答が用意されていると感じるのでしょうか。

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決して批判はしていないのです、村上さんの本が「すごい」という点ではうなるしかありません。たくさん作家の本が涙を誘ったり笑顔を引き出したり、背筋に寒気を覚えさしたり、気持ち悪いという感覚を与えてくれることはあります。しかし村上さんの本ほど複雑で不安になる「特殊な感覚」を与えてくれる本はありません。その特殊な感覚が村上さんの本を読む意味なのでしょう。

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本を読み終えた後には苦しいほどの疲労感があります。3冊に及ぶ大作を2日半という私にとっては驚異的なスピードで読み切ったからかもしれませんが、それだけではないのです。スポーツの後の疲労感とは違い、ちょっとBlogでは書けない表現を使わないと説明できない疲労感なのです。逃避しますが「まあ読んでもらえればわかります。」

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いろんなことを覚悟して読んでいただきたい、そして読むだけの価値は高いと感じます。ただこの本に感化されてあなたの生活を変える事はお勧めしません。

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2013年4月22日 (月)

村上春樹氏の作品

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「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」が発売されました。タイトル長すぎ…まだ読んでいません(笑)

 その前に「1Q84」こちらはさすがに長編すぎて手が出ませんが、「色彩を…」は読んでみたいな。彼の作品の中で私が読んだのは「ノルウェイの森」「海辺のカフカ」と多くの短編集です。全部で20冊ほどは読んだでしょうか。大学生がはまる「正解のない結末」という作風紹介を聞いて納得。理系の私は「正解のない結末」に耐えられず、「ねじまき鳥クロニクル」を途中で断念しました。全巻買ってあるのでもう一度読み始めようかな?

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村上さんの細かい描写と美しい文章にはいつも感動します。しかしストーリー展開には悩みます。小松左京さんの作品以上にSFX(例えば「海辺のカフカ」)であったり、起承転結でいえば「起承」で終わっていたり、いえもっと言えば「起」で終わっているような作品に出合うと「理系の人にはおすすめできない」という感想しかありませんでした。理系の人にとって科学的で明確な結論は人生の中で最も重要な部分ですから。

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彼の作品にはハルキストによる書評が多くて困ります。ハルキストとは単に彼の作品が好きなだけではなく、ライフスタイルにまで影響を受けている人の事です。村上さんと人生が重複しているのですから、自分の人生を否定するような感想など書けませんよね。そのためすべて絶賛です。しかしハルキストではない一読者の私は村上さんの作品の中でも面白いものだけを選んで読みたいのです。「パン屋襲撃」がドラマ化され、海外でも評価が高いと聞いて衝撃を受けるほどに驚いたのは私だけなのでしょうか。

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しかし「色彩を…」は人の書評を信じず、リスクを冒せるほどの金額ではあります。次に本屋に行ったときには考えます。

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2013年4月 6日 (土)

古事記を考える

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興味があって少し古事記に触れてみることにしました。本当に少しだけなので、素人の娯楽としてやさしい目で見守ってください。「出典」は聞かないでください(笑)

古事記が「信頼性のない神話」と一刀両断される時代は終わっており、文章の中から隠れた真実を探そうとする試みが続いています。もちろん、永遠に証明されることはないでしょう。古事記は天皇家の伝承を奈良時代に文章化した日本最古の歴史書の一つです。日本書紀も同じ時代に書かれており明確な歴史書と認定されていますが、一人の男性(もしくは女性)が語る伝承をまとめた古事記を歴史書とみるか単なる神話物語とみるか、意見が分かれています。

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世界的に有名なギリシャ神話やエジプト神話で、神々は「超人」です。古事記には神々が出てきますが同じく超人的であり実在と考えられません。イザナギにイザナミは日本版のアダムとイブでしょうか。古事記には西洋やアジアと似かよった伝承がありますし、一方で独自性の高い物語もあります。独自性の高い部分は歴史的要素が高いはずです。一方西暦700年に書かれた歴史書だから遠いヨーロッパの聖書(旧約、新約)や、インドのヒンズー教や仏教、中国の神々の影響を受けている事も否定しにくいはずです。日本は中国と2世紀から交易があり、中国とヨーロッパは陸続きなのですから700年もたてば聖書の言葉でさえも届いていておかしくありません。そして仏教は6世紀から日本に届いています。

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物語が似通っているといえば「黄泉の国」スサノヲの伝承があります。黄泉の国の王としてギリシャ神話のハデスが有名ですね。世界各国に死後の世界に関する似たような神話がありますがオリジナルはギリシャ神話かもしれません。古事記の上刊はかなり話が「雑」ですが、歴史として古い時代の話なので伝承が不完全でも当然と言えますし何かを参考に書かれていてもおかしくありません。しかしそんな神話ばかりの上巻でもアマテラスとスサノヲ、国譲り、天孫降臨などは何らかの史実に基づいた伝承なのではないかと感じさせるところです。物語としてとても面白く、もし古事記が想像だけで作り上げた物語だとすると「出来すぎている」と感じます。史実がゆがんだと考えたほうが妥当のような気がします。

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さて、まだ読み始めたばかり。これから古事記の話題に触れていこうと考えています。

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2013年1月24日 (木)

逆説の日本史 別巻1 ニッポン風土記[西日本編] 「井沢元彦」

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過去の読書経験から風土記はオムニバスな雑学に近く、物語として面白かったという経験がありません。ただ数少ない読書経験の中で、このニッポン風土記は面白い部類だったと感じます。ただやはりひとつひとつの物語が短すぎる、西日本全体を一つの本にまとめるには無理があったようです。

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逆説の日本史は着眼点として面白いシリーズです。無理のある発想とは感じますが、その無理の中から真実のヒントが導き出されることもあるはずです。特に先史時代から平安時代までの彼の持論は納得がいくものばかりです。無条件での全肯定はしませんが、私の史観も彼の影響を大きく受けています。

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このニッポン風土記でも彼の持論は冴えています。ただ文学という意味、読みやすさという意味では卓越した部類とは言えません。ただ文学者の本との比較として卓越していないというだけで、歴史学者の本の中では群を抜いて読みやすい。ただ驚くほどの繰り返しの多い文章には(それが彼の作戦ではあるのですが)余分に金を払わされているのではないかと損をした気分にさえなります(笑)

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井沢さんの作品を読むのであれば、最初の本としてはあまりお勧めできません。

2013年1月20日 (日)

しをんのしおり「三浦しをん」

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三浦しをんさんのエッセイ集、正確に言えばBlogへの投稿をまとめた本です。小説家としてデビューする前に書かれたエッセイのようですが、完成度は十分に高いですね。面白いです。彼女の最近の本は文学として質が高く、言葉を換えれば少々難読なのですが、このころの本はわかりやすくて読みやすい。

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古本屋でアルバイトをしながら、かなりの浪費癖をみせる「しをん」さんの日常と、かなり過激で下品な心の叫びが楽しい一冊です。基本的にBlogがベースになっていますから、10ページ程度で1日分の日記のようになっています。気軽に読みやすいエッセイ集になっています。

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今でこそベスト・セラー作家の仲間入りをされた三浦さんですが、このエッセイを書かれたころはお金のやりくりに少し苦労されていたようで、親近感がわきます。ただ浪費家で楽観的な性格ではあるようなのですが、最後で堅実性が頭をもたげて買い控えるあたりが庶民派です。

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ただし漫画好きの妄想癖、時々何の話かわからなくなりますが、漫画が好きですと共感できる部分も多いはずです。このころから文章力は格別です。


Mar0172

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